HOME > 学習ノート > 佐々木式指圧NO.1 > NO.2 > NO.3 目次 第3章 全身検査法および一般指圧治療法 (検査法{疾病判断法および治療部位決定法}および治療法) 1.起立または正座 2.伏臥 ①背部 ②臀部、下肢後側面 3.仰臥 ①前頭部 ②額面部 ③咽頭部 ④胸部 ⑤腹部 ⑥下肢前側部 ⑦上肢部 4.横臥 5.正座 ①後頭部 ②頚部 全身治療法 患部治療法 病患中枢治療法 第5章 脊髄反射療法 第6章 指圧療法適応症 第7章 慢性難病治療の奥義 第8章 治療法適応上の注意事項 第9章 各種疾病治療指圧点 第1節 消化器系病 急性胃カタル、慢性胃カタル、胃痙攣、胃酸過多症、胃酸欠乏症、胃拡張、胃下垂、 胃アトニー(胃弱)、胃潰瘍、胃癌、腸カタル、肝臓充血症、便秘、盲腸炎、肝臓充血症、 肝臓硬化症、胆石症、慢性腹膜炎、胃痛、消化不良 第2節 呼吸器系病 咽頭カタル、気管支カタル、耳下腺炎、扁桃腺炎、喘息、百日咳、鼻カタル、肋膜炎、肺結核、肺炎、 第3節 循環器系病 心臓弁膜症、心臓内膜症、心悸亢進症、狭心症、動脈硬化症、血圧亢進症 第4節 泌尿器系、生殖器系および婦人病 腎臓病、膀胱カタル、遺尿症、遺精、早漏、陰萎、その他の生殖器病、子宮内膜炎、 子宮実質炎、卵巣炎、月経異常(無月経・月経過多・月経困難) 第5節 神経系病 脳充血、脳貧血、脳溢血および中風、神経衰弱、ヒステリー、各種神経痛、不眠症、頭痛、めまい 第6節 五感器系病 眼諸病(遠視・近視・結膜炎・トラホーム・夜盲症・角膜実質炎・ソコヒ) 耳諸病(難聴・耳鳴り・耳聾・耳漏・耳痛) 鼻諸病(蓄膿症・その他の鼻病) 第7節 その他 脚気、関節リウマチ、筋肉リウマチ、関節炎、痔疾、脊椎カリエス、乳汁不足、肩こり、 病因不明の病治療法、性力増進法、性能力増進法、疾病予防健康増進法、疲労回復法 NO.2 第1章 全身検査法および一般指圧治療法 検査法{疾病判断法および治療部位決定法}および治療法 注意 1.疾病の治療にあたり先ずその診査の必要なことは言うまでもないことで実地にこれを行うには 診査しながら治療をして行く方が便利であるから本法ではこの方法を用いる。 なお、本法によって診査し更に参考編にある「症状による疾病判断表」により大体の病名を判断し 「治療法各論」の病名欄及び症状欄を参照されるならばその原因及び治療法は判然とし養生手当法等 も分かるのである。尚この際問診によって患者の訴えるところを充分に聞いて見る必要がある患者は その苦痛を訴えるのみでも軽くなるものであるから若し患者の考えが間違っていても決して頭から 否定すべきでは無い。 先ず一通り診査と治療を行ってからよく噛んで含める様にその考えが間違っていることを教えて やる方が良いこれは一種の精神療法にもなる。 2.病気の診査に当たり一か所の異状のみにより判断せず身体全体及び各種の症状をできうる限り 詳細に調べて患者の症状と対照して判断することが肝要である。 3.病気の治療に当たり一番大切なことは何処を如何にして治療すべきやであります。 子の診査に際してはこの調査に主力を注ぐべきである。 4.通常、身体の診査の際に発見された圧痛点、筋肉の異状緊縮部等は充分指圧、その他の手技を 応用してこれを除去して行くのみで患者の苦痛は去り漸次(ぜんじ)病気は治癒して行くことが 多いのであるから必ずしも病名の判断にとらわれず先ず治療して苦痛を取り除くことが医術の 生命であり先決問題であるから治療を先にし後徐に病名の判断をして手当て養生法等を講ずべきである。 5.左(さ)に患者の姿勢が術を行い易い順序に述べるが患者の状況又はその時々の事情の応じて 患者の楽な姿勢で行うべきは勿論である。 6.絶対安静を要する病人にはこの治療法の内の一部を省略するも止むを得ないこともある。 7.以下各部診査及び治療に当たり特に注意を要する事項はその時々に重複しても掲記することにする。 8.その他治療上必要な細部は第五章治療法応用上の注意を充分に読んでおかれたい。 9.診査治療順序=起立(又は正座)伏臥(背部、脊椎骨、臀部、下肢後側部等の指圧及び各種操作法) 横臥(肩甲骨拡張法)仰臥(前頭部、顔面部、喉頭及び咽喉部、胸部、腹部、下肢前側部、上肢部の 指圧及び各種操作法)正座(後頭部、頚部、肩甲部上部指圧及び各種操作法)後頭部及び頚部は 伏臥のときに行っても良い。 1.起立または正座 診査法 1.患者を直立又は正座せしめ両腕は力を抜き垂直にならしむ。 イ、両肩の高さを比較す(視診)(不平等なるは骨盤に異状あることが多い) ロ、側面の腰線の切込の平等なるやを検す(視診)(イ、に同じ) ハ、脊柱骨の彎曲なきや(視診)(彎曲あるは骨盤に異状あることが多い) ニ、肩甲上部の僧帽筋の肥痩及び硬度を左右比較触診及び視診する。 (肺尖部の異状を発見す「肉の陥没せるは肺尖に異状あること多し」肩甲部の硬きは血液循環不良なる 証拠にて頭痛、逆上、不眠症、肩の凝り等を起こし脳の病気を招きかつ胃腸も不消化がちになる) 2.患者を起立又は正座せしめ上体を前方に屈曲させ術者は患者の後側に位置し脊柱骨上方より漸次 指圧しながら下方に下る。 イ、棘上突起の間隙の不平均及び特殊の高低なきや。(触診) ロ、脊柱両側を指圧し圧痛又は知覚過敏点なきや。(触診) ハ、脊柱両側の溝に示指及び指頭を当てやや加圧しながら徐々に下方に下り双方の溝の高さは 同一なるやを検す。 (脊柱骨の異状を発見す本法により異状ある部位を知るならば脊柱骨と内臓の関係一覧表により 内臓の異常部位を察知することができる) ●背部診察法 ●伏臥 準備=なるべく軟らかな敷物を用い患者の身体を真直ぐにし高低の無い様に平に足を伸ばして伏臥。 枕は外し顔は左右何れにても楽な方に向かせ敷物に密着させ両手は軽く身体両側に添えて置く。 1.背部 ■ 背部診査法 1)棘状突起の間隙の不平均及び特殊の高低を観察する。 2)脊柱両側及び仙骨脊柱筋に圧痛点知覚過敏点はどうか。 3)脊柱両側の溝に示指及び中指の指頭を当て加圧しながら下方に下りつつ双方の溝の深さはどうか。 4)筋肉の異状緊縮はないか(脊柱骨両側を特に丁寧に指圧しながら観察する) (肩甲患部筋肉の異状緊縮又は知覚過敏は内臓の故障に関係多く仙骨脊柱筋に異状緊縮あるとその側方の脊柱骨 の位置によりて全身の異状を察知することができる)※脊柱骨と内臓との関係一覧表を参照 この場合両側の何れかに知覚過敏又は異状緊縮あるときはその付近の椎骨の異状を発見することが多い ■ 治療法 ① 脊柱骨に副脱臼その他異状あるなら、その周囲は特に丁寧に指圧してその組織を緩め掌圧法その他の治療法 を行うことによって整復できる。 (頚椎は正座の時に行うを便利である) ② 脊柱骨の異状整復は決して急ぐことなく指圧法により組織を緩め一般の全身治療操作によりて諸作用を調整 し自然癒能力の促進とで徐々にその回復を計ることが肝要である。 (これは背部の治療法を行うことにより自然に整復する) ●治療順序 ①脊柱骨撫擦法(10~15回)片方の手のひらを棘状突起上に当て、すばやく撫擦を行う。 ②脊柱側指圧法(約3回)脊柱骨を中心にそれより約2㎝くらい離れた所の両側同時に指圧を行う。 両手の拇指頭で脊柱骨を挟み爪面を向い合わせ、上から下へと行う。 ③脊柱筋指圧法(約3回)脊柱側指圧法と同じ要領で脊柱骨を中心に両側約3㎝離れた所に指圧を行う。 ④肩甲骨部の指圧法(約6回)肩甲骨の周囲に約3回位指圧してその部の周囲の組織を緩めたらその後、 片手で指圧しようとする側の肩先を押さえ他の片手で肩甲骨の中へ押し込むように指圧する。 (約3回)1側が終わったら他の1側も同様に行う。 ⑤病患中枢の指圧法(約10回)必要に応じて行う。脊柱側指圧法と同様。 ⑥脊柱骨側弯症調整法(必要に応じて行う)脊柱骨がいずれかの方に弯曲したものを矯正する方法で弯曲 していない時にはもちろん行う必要はない。 その方法は弯曲している方の側を下に横臥させ術者は患者の腹の側に位置して両手の示指、中指、薬指を 密着させ指頭を揃えて下側に向いている脊柱骨(つまり弯曲した脊椎部)に各指頭を当て患者の上体を術者 の方に引き寄せるようにしてやや浮き上がる位を限度に持ち上げる、これを数回繰り返す。 ⑦肩甲骨拡張法(左右3回) ⑧脊髄反射衝動喚起法(必要に応じて行う)必要な部に強圧又は叩打法を行う。 ⑨脊柱骨及び脊柱筋掌圧法(一箇所1回乃至2回)=椎骨を正しくする。 椎骨の一部が著しく突起している部には徐々に1分間位掌圧法を行い次に上方から下方に順次施し次にその 両側を掌圧する。 ⑩背部撫擦法(10回乃至15回)全背部をやや力を加えて撫擦法を行い組織を調える。 (背部治療後筋痛を訴える人があるので必ず行う事) ◎印は必要ない場合は省略して差し支えない。 ■応用=脊椎カリエス、脊髄神経痛、副脱臼による神経痛、リウマチ、神経衰弱等には特に有効である。 その他全身神経機能の中枢なればいかなる疾病もこれを省略せず行うときは多大な効果がありその全治を促進する。 また健康者にこれを行うときは疲労を取り去り各器官の機能を調整し新陳代謝の順程を良好にし健康を増進し 疾病を防止する。 ■注意=治療に当たり疼痛が甚だしい時又は気持ちの悪い場所は急激にまた強く行わず徐々に疼痛の除去 に努め漸次強く行う。※圧痛点、知覚過敏などは特に指圧回数を増加しその他は定められた回数だけ行う。 ●背部診察法 ●伏臥 準備=なるべく軟らかな敷物を用い患者の身体を真直ぐにし高低の無い様に平に足を伸ばして伏臥。 枕は外し顔は左右何れにても楽な方に向かせ敷物に密着させ両手は軽く身体両側に添えて置く。 2.臀部、下肢後側 (イ)診査法 触診:押圧し、圧痛点、知覚過敏点、筋肉の異状緊縮などを診査する。 異状のある時は神経痛、リウマチ、関節炎、ヒステリー、その他婦人病等の疑いがある。 視診:皮膚の色及び浮腫、水腫その他の異状はないか検査する。 (ロ)治療法 大腿、下腿部に強速撫擦法を行う。(約15回両脚共) 指圧法:臀部より始めて足裏で終る。 患部指圧(疼痛または圧痛がひどい箇所はその周囲より指圧を始め疼痛または圧痛が無くなるに従い 漸次痛感部を行う) 患部に強速撫擦法を行う。(約15回) 下肢伸展法を行う。左右各2回位。脚部の関節炎骨膜炎等には行わない。 腰部調整法を行う。(約3回) 下肢後屈法を行う。(約3回)脚部の関節炎骨膜炎には行わない。 (ハ)応用=坐骨神経痛、その他下肢の神経痛、リウマチ、脚気、不眠症、のぼせ、神経衰弱、下肢部の 関節炎及び骨膜炎(関節炎、骨膜炎には指圧のみ行う)、婦人病、下腹部の疾病、糖尿病、下痢、腎臓炎、 膀胱カタル、その他すべての病気に有効である。 (ニ)注意=圧痛、異状緊縮等があれば先ずその治療を行い、その後に病名を判断して手当養生法を行う方が良い。 下肢後側の治療は伏臥の時に行い、前側の治療は仰臥の時に行う方が便利である。 3.仰臥 (1)前頭部 (イ)診査法 視診:顳顬(こめかみ)の所の脈管の拍動状況 脈拍の拍動甚だしくまた脈管が膨れて外部から拍動が分かるようなのは相当充血している場合で中年以上の 人は動脈が硬化していることが多い。 触診:上記と同部を軽く指圧してその拍動状況、頭部の硬さを診査する。 指圧してみてぶよぶよする感じのあるものは頭部の血液循環不良で汚血が停滞している。 (ロ)治療法 ・両手の拇指頭で(拇指を揃えて)指圧法を行う前頭部より後頭部の方向へ頭部中央4か所。 ・次に両拇指頭を離して両眉毛の終端上部の線3か所(左右同時に)指圧 ・同じ要領でこめかみ部側方の3か所(左右6か所) ・その他 以上何れも両母指頭にて左右同時に各々約3回ずつの指圧を行う。 ・頚椎伸展法を行う。 (ハ) 注意=疼痛部、圧痛部等の患部は特に細かく丁寧に指圧する。 ・汚血停滞の際は特に10回以上充分に指圧し、正座位置における治療法(後頭部、頚部の指圧)と頚部調整法と 相まって血液の循環を良好にする。 ・指圧中頭に響くような疼痛を感じることがある、この部分に充分指圧を行うときは疼痛が去り治療後、頭部が 軽く気分も爽快になるのが普通である。 (2)顔面部 (イ)診査法 ・視診:眼瞼に浮腫又は充血はないか、痔ろうその他顔色等に異状はないか検査する。 ・触診:鼻翼より鼻部の両側に沿って鼻根(眉の始点)指圧法を試みる。 この部位に圧痛或る時は蓄膿症や鼻疾患があることが多い。 ・耳の周囲―打診又は指圧しその他外聴道周囲を指圧。 この部位に圧痛その他異状が或る時は中耳炎その他の耳の疾患をあることが多い。 乳嘴突起(乳様突起?)を打診して異状(患者の感覚を聞き)ある時には特に中耳炎、乳嘴突起炎などの疑いがある。 ・目を閉じさせて、眼球を指圧する。この部分に圧痛がある時は目の疲労、その他の眼疾があることが多く、硬い 場合は視力障碍を起こしていることが多い。 (ロ)治療法 ・主として示指を用いる。左右同時に程よい圧で患者の感覚を聞きながら指圧法を行う。(以上鼻の治療に行う方法) ・次に眼窩部及びその他の眼の周囲を指圧する。(始め眼球の上部より下方に向かって、次は下部より上方に向かって、 次に左から右に向かって今度は右から左に向かって)を極めて軽く数回乃至十回位指圧し次に両手の拇指の指腹で眼球 の真ん中を軽く押さえるように2回位指圧する。(以上鼻の治療に行う方法) ・眼球及びその周囲の指圧は極めて軽く行う。その他の部位は疼痛が去るに従い徐々に多少強く行っても差し支えない。 (何れの場合も患者の気持ちを聞きながら行う) 何れの場合も左右同時に施術をすると良い。 (ハ)注意=眼球は指圧後多少充血して赤くなることもあるが間もなく消失するので心配はいらない。 (ニ)応用=頭部顔面部の治療は脳病、神経衰弱、精神病、頭痛、不眠症、耳、鼻眼病、歯痛等に有効である。 (3)咽頭部 (イ)診査法 拇指と他の四指とに分けて喉頭部、咽喉部の両側に軽く指圧する。本法を試み異状なき時はおもむろに強く行ってみる。 (圧痛又は内部のムズムズするのは扁桃腺、炎、咽喉カタル又はその前兆の事が多い) (ロ)治療法 指圧法を数回行う。 少々強い指圧法を行うときは両側を同時に行わず片側ずつ行う事。 次にその両側の皮膚筋肉血管を同時に上方に引っ張るように数回上下しつつ迅速に指圧をする。 (ハ)注意=指圧の際咳が甚だしいときは湿布を試みて効果があることが多い。 (ニ)応用=咽喉カタル、気管支カタル、扁桃腺疾患等その他の呼吸病。 仰臥 (4)胸部 (イ)診査法 ・拇指を除く他の四指を揃えて肋間及び鎖骨の上窩を指圧する。 ・肋骨の硬さはどうか、硬すぎることはないか。 ・肋間の隙は整っているか、バランスはどうか。 (硬すぎたり、間隙が均等か、不均等の場合は肺、肋膜等に疾患のあることが多い) ・肋骨が下垂していないか(胃下垂の患者は下垂している者が多い) ・肋間及びその他に圧痛点、知覚過敏点はないか(肺、心臓、肋膜等に異状のあることが多い) ・鎖骨上下窩の陥没はないか(陥没している場合肺疾患又は身体衰弱している者が多い) ・鎖骨上窩に指頭を入れることが出来ないほどに気管に接触していないか。 ・鎖骨上窩の深さは同一か。 (接触が甚だしい場合は気管支カタル、喘息の素因となり、鎖骨上窩の深さが同一でない場合は静脈の血行が 阻害され肩の凝り等の悪い癖が抜けないものである) ・(ロ)治療法 異状のある部位には細かく丁寧に10数回指圧法を行いその他全胸部を数回しあつして圧痛及び筋肉の 異状緊縮を解き組織を平常にする。(指圧治療は診査法と同じ要領で行う)次に肋間全体を指腹で押圧し、 次に撫擦法を試し気分の良い時は数回これを行う。 ・鎖骨挙上法を行い後に同上窩部に指圧法を数回行う。 ・鎖骨と胸骨との癒着部に約1分間指圧を継続するときは迷走神経を抑制し、すべての呼吸器病、百日咳に有効である。 (ハ)応用=肋膜炎、心臓病、肺疾患、肋間神経痛、肩の凝り、気管支炎、感冒等。 仰臥 (5)腹部 ・言うまでも無く腹部は人間の精力の発現地で病気治療にはこの部を度外視しては充分なる効果を上げる ことは出来ない。腹部の状態によりその人の健康状態が察知できる。 ・腹部の状態の完全でないと外見では健康そうな人でも必ず何らかの疾患を持っているとみて差し支えない。 ・この腹部治療法は背部の治療法と併せて本療法における健康及び精力増進法の双璧ともいうべきものである。 ・ゆえに腹部の診査及び治療は慎重に行う必要がある。 準備=排尿後に両膝を立たせ、全身の力を抜かせる。 ・診査及び治療には腹部のみ特に直接皮膚に行うこと。 ・出来る限り静かにゆるやかに施術すること。 診査法 ①腹部全体の高低を見る(腹部が陥没しているのは胃腸の衰弱と共に勢力の衰えと見て差し支えない。) ②鳩尾の高低(鳩尾の高いものは胃、肝臓の疾患或いは脂肪過多症の者が多く、低いものは胃下垂又は内臓の 下垂している者に多い) ③皮膚の状態(滑らかなものが良く、カサカサしているのは栄養の状態が良くないか又は何らかの疾病を持 っている) ④その他腹部全体の様子(腹壁が過度に緊張しているのは精神病患者に多くまた腹壁が緊張して光沢のある 場合は腹膜炎の疑いがある。臍の周囲に静脈が蛇のように浮き上がっている場合は肝硬変の事が多い) 触診 ・右手又は左手の示指、中指、薬指の三指を揃えてその指頭で腹部の一端より全体に軽く又はやや強く 指圧をし、次に掌で押圧してみる。 (腹部は通常力を入れると堅く力を抜くとゴムまりのように柔軟で弾力のあるのが健康体である。) ・腹部に塊はないか、圧痛は無いか。 ・便又はガスが停滞しているかどうか(便が停滞している時は直腸部に塊がある) ・圧して気持ちの悪い箇所は無いか。 ・鳩尾に堅い箇所は無いか。(もしも塊があり圧して疼痛がある、または気持ちの悪い箇所は病患部と 見るべきである) (一枚板のように硬い場合及び塊のある場合は精神疾患の者が多い) (鳩尾より左側が硬い場合又は圧痛ある時には胃に異状がある者が多い) (胃に凝固があり、3週間以上治療しても解けない者は胃がんの疑いがある) (胃部を押圧すれば疼痛は徐々に無くなるものであるがますます痛くなる場合は胃潰瘍の疑いがある) (右肋骨下部の硬いのは肝臓に異状がある者が多い) 治療法 腹部の治療に当たり、特に慎重に行う。始めは軽圧し、圧痛あるうちはその痛苦が去るまで決して強く行って はならない。 指圧法は触診と同様。 ・七五三指圧法、六角形指圧法、円形指圧法、患部指圧法 肋骨挙上法:肋間部の間隙が著しく広い時、すなわち肋骨の下垂して場合及び必要に応じて行う。 ・腹部掌圧法(約2回)下腹部全部に亘って片手で静かにかつやや強く行う。 ・腹部撫鎮法(数回)両手を開き、拇指と他の四指に分ける。四指間は密着し拇指は始め鳩尾から他の四指 は肋骨の下部(両側、腹部)に当てて下腹部に向けて撫で下ろす。(この時両手の各四指は側腹部に添って 下り下腹部膀胱付近まで撫で下ろして1回を終わる。拇指は他の四指と分けたまま自然に任せる) ・患部手当法:行って気持ちの悪い時は止める 応用 腹部治療法は胃腸病、肝臓病、膀胱カタル、神経衰弱、感冒、子宮病、その他婦人病、その他いかなる疾病 にも有効である。 注意 腹部が衰弱して著しく腹力の消失している場合は腹部治療は撫鎮法、患部手当法のみに止めその他は腹部に 直接触れることを避け、腹式呼吸法で腹力を養うようにすべきである。なお、暗示法を応用して食欲の増進を図る。 便及びガスの停滞している場合は盲腸部及びS字状部を特に丁寧に指圧する。 腸結核及び妊娠中又は生理時の婦人には極めて軽く静かに行う。 (6)下肢前側部 (イ)診査法 視診:浮腫水腫の有無(特に浮腫の部分の皮膚が緊張して光沢がある時は重症なことが多いから特に慎重に 他の部分も診査し、かつ症状による疾病判断表により判断しその病名を知り治療法各論を調査して治療法、 手当法、養生法に万全を期すこと) 触診:圧痛点及び知覚過敏点の有無及び浮腫、水腫などを調べる。 (ロ)治療法 両足部に指圧法を行う及び全部、…の順に各3回(圧痛点始め軽く圧痛が去るに従い徐々に強く10数回) 次の治療法は患者の感覚により適宜行う。 ・下肢前屈法:患者の感覚を聞きながら行う(下肢の関節炎には止めた方が良い) ・下肢抵抗法:左右各々約10回ずつ ・下肢振動法:両脚共約30回 ・下肢回転法:左右各々約10回 (7)上肢 (イ)診査法 視診:浮腫水腫の有無(下肢前側及び後側の視診と同様) 爪の色と皺等の有無(爪の色悪く又は皺があるのは栄養障害又は何らかの疾病あり) 触診:圧痛点その他の異状の有無 (ロ)治療法:術者は片手を持って患者の腕骨部を持ち他の片手を拇指と他指の四指に分けて拇指の指頭と 中指の指頭で漸次下方に・・・まで表裏を同時に掴むようにして・・指圧する。 (約3回圧痛点は始め軽く圧痛去るに従い強く行う) (ハ)応用:上肢の神経痛、リウマチス、のぼせ、不眠症、関節炎(関節炎の時は疼痛点の周囲を主とする) なお必要に応じて、上肢伸展法、上肢回転法、上肢振動法、上肢抵抗法を行う(方法は下肢の時と同様) 4.横臥 肩甲骨拡張法左右数回行う。 5.正座 正座において先ず後頭部及び頚部の診査と治療を行うべきであるが、順序として胸郭拡張法、肩甲上部指圧法 を先に行った方が便利である。 ・胸郭拡張法:(約3回) ・肩甲上部指圧法(約3回)左右同時に両拇指で指圧する(この時肩の骨は避けて柔らかい所を圧す) 圧痛、筋肉の異状緊縮等あれば数十回行って圧痛の除去、異状緊縮の緩解に努める。 ・次に肩甲骨部の指圧法を行う。(伏臥位で行っても良い) 応用:この方法は肩甲骨部の指圧と相まって肩の凝り、胃腸病、心臓、肺等の疾患に有効である。 通常の肩の凝りのみならば以上の方法のみで十分に緩解することが出来る。 (イ)診査法 ・圧痛点は無いか。 ・知覚過敏点はないか。 ・筋肉の異状緊縮はないか。 頚椎部に圧痛点、知覚過敏点、筋肉の異状緊縮等がある時にはその部位により 脊椎骨と内臓の関係一覧表で、その病患部を推測できる。 頚椎部、後頭部に異状がある時にその部に指圧法を行う時はその部の神経の連絡によって患部のみだけでは なく他の部位に異様な感じを起こすことがある。 後頭部、頚椎部より肩甲部に指圧を試みて硬いのは血液循環不良の証拠で、頭痛、のぼせ、不眠症、肩の凝り 等を起こし、脳の疾病を招着やすく、胃腸は不消化勝ちである。 (ロ)治療法 指圧法(約3回)指圧の順序は後頭部より頚部まで指圧する。術者の左手で患者の前額部を軽く押さえ右手 で指圧をする。 異様な感じのある時は始め軽く指圧し、異様な感じが去るに従って漸次強く行う。頭痛は即治する。 患部治療法:異状ある場所は細かく十数回指圧法を行う。 頚椎調整法:術者の手のひらで患者の頭部の適当な所に添えて、あまり力を入れずに、患者自身にその頭を 前後左右に少し痛みを感ずる位に動かさせる。 頚椎に副脱臼がある時にはボキッと音がして整復する。これを3回繰り返す。 頚部調整法(1回) 頭部手当法(1回):要領は頚部調整法と同様でその違う点は患者の前額部に当てた手に霊動を起こさせこ れを約30秒位行う。この方法は患者に好感と安心を与え精神鎮静法として各種治療法の最後に本法を行う。 応用:後頭部及び頚部の治療は脳病、顔面の諸病、頭痛、中風、精神病、脳充血、脳溢血、不眠症、胃腸病 等に有効である。 備考:第一頚椎の両側には上頚交感神経節があり、(頭部及び顔面の脈管収縮神経)この部に充分指圧を 施す時は頭痛を治すに顕著な効果がある。その他眼諸病、鼻カタル、咽頭及び扁桃腺等、その他耳の疾患 に有効である。 ・側頚部中央胸鎖乳突筋の後縁に指圧法を施せば横隔膜神経を抑制し、横隔膜の衰弱を救い頚椎3,4,5 (横隔膜神経の起始)の両側の指圧と共にしゃっくりを止めるには有効である。 ・胸鎖乳突筋の前縁に指圧法を施せば迷走神経を刺激する。迷走神経は上頚交感神経節と交通し、一名胃神経 とも称し内臓の神経を通じて太陽叢と連絡し主として胃の地殻運動と分泌を盛んにする。 ・頚部の神経は単独に作用せず一個の神経叢を形成しその周囲に向けて支肢を出している関係上各神経 相関連し相互に影響するものであるから特に丁寧に指圧をする必要がある。 全身治療法 全身治療法とは前各種治療法を一通りを全身に行うものであるが健康者は毎週一回少なくとも一か月二回 これを行う時は一層健康を増進しかつ精力増進法ともなる。 またこの際平常気づかない疾病を発見することもできる。 身体各部の圧痛点、知覚過敏、筋肉の異状緊縮等(前述身体診査法によって)を細密に調査しつつ 本治療法を行う時は疾病の早期診断となりかつ早期治療となり病気を未然に防ぐ最良の方法となる。 応用:神経衰弱、動脈硬化症、中風、貧血、脊髄部の諸病、及び健康を増進法として偉効がある。 患部治療法 全身診査中は発見した圧痛部、筋肉の異状緊縮部、知覚過敏点部及び患者の苦痛を訴える部その他 異状のある部には丁寧にかつ細かく十数回も指圧法を行いその他必要に応じて掌圧法、手当法(霊動法)等の 基本手技を行う。これを患部治療法という。 病患中枢治療法 疾病に関係のある脊椎部(脊椎骨と内臓諸器官との関係一覧表を参照)両側には特に丁寧かつ細かく指圧法を行う。 これを病患中枢治療法という。
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