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 肩と肩甲帯の観察

 

問診

主観的テスト

1.摩擦音+痛み=炎症

肩部を評価する際にまず確かめることは、日常動作でポキポキという音やクリック音など
関節摩擦音がするか。
そしていつ、どんな時に起きるか、痛みを伴うかもたずねる。
摩擦音に痛みを伴う場合、部位に炎症がある可能性が考えられる。

2.日常動作の制限

肩に痛みや動きが制限されている場合、日常生活に支障はないか尋ねる。

肩の痛みがある場合、次のことが考えられる。

◇ 前方への動作=肩前方インピンジメント/二頭筋の炎症

◇ 上方への動作=ローテーター・カフ外側面のインピンジメント
(外側面が圧迫されている可能性がある)

◇ 後方への動作=前方の不安定性

3.過去の外傷・・・肩に外傷や脱臼について尋ねる。脱臼=(肩関節)靱帯のゆるみ

4.傷跡=過去の手術/外傷 

5.薬剤=抗炎症剤の服用 服用したのは抗炎症剤か鎮痛剤
(痛みを和らげるものと炎症を抑えるもの)

6.夜間痛=ローテーター・カフの炎症
夜間痛があるかどうか、ローテーター・カフに炎症があるか判断する目安になる。

夜寝るときに肩を下にした時に痛みがある。陽性の疾患がある答えが返ってくるかを
確認します。

※ローテーターカフは「肩甲下筋」「棘上筋」「棘下筋」「小円筋」計4つの筋肉の
末端の腱によって形成される板状の腱の事で「回旋筋腱板」とも呼ばれます。
この回旋筋腱板は上腕骨大結節及び小結節に付着し、肩関節の関節包に合流しています。

7.痛みの移動=頚部・神経の関与

頸部にまで及ぶのか、腕や手に痛みがあるか、肘や手首、手の先に痛みがないか
確認する。
この場合腕だけの疾患というより頚部が関わっている可能性がある。
患者が肩が痛いと言ってもそれは僧帽筋上部や、肩甲骨周囲のことが多い。
これらの痛みの原因は肩ではなく頚部の可能性は否定できないので他の領域についても
質問をすること。

 

◆ 観察ポイント (肩と肩甲帯)

 

1)肩部の高さ:左右の肩の高さ-通常利き腕の肩の高さは下がっているが、
正中線を基本に見る。

2)僧帽筋比較:筋肉のつき方も観察する。僧帽筋は均等についているか、
筋肉のスパズムが頸部にまで広がっていないか、頚部に痛みがないかも尋ねる。

3)肩鎖関節の分離:左右の肩鎖関節も対称か、ふくらみやくぼみは左右均等かどうか、
片方だけくぼみが大きい場合、肩鎖関節の分離の恐れがある。
大きく腫れていれば関節炎による変化や骨曲が大きくなっている可能性がある。

4)三角筋比較:三角筋の位置

三角筋の全面と側面をみましょう。左右の大きさは同じか、腕を使わないことや
神経障害による萎縮、弱さは見られるか。

5)肩部前後の位置

横から観察して下さい。肩甲帯が胸部のどの辺りに位置するかよくわかります。
肩は前に入っているか、それとも後ろか、普段の姿勢もわかる。
首の前に突き出し肩を丸めるような悪い姿勢は肩関節の前方を圧迫して固くしてしまう。

この姿勢では腕を頭より上に上げることは困難になる。正しい姿勢であれば、
腕の可動域は向上します。肩が前に入るような姿勢の患者は肩前方の靭帯に
炎症によるインピンジメントの可能性があり、患者自身も自覚症状があるでしょう。

6)腕の位置

腕が体のどこに下がっているかを確認しましょう。

後ろの場合、ローテーター・カフ後方か肩前方の組織が拘縮しているかもしれません。

肘関節は曲がっているか、伸びているか、曲がっている場合、二頭筋腱の拘縮か、
肘の機能障害を疑います。後ろからも観察します。肩甲骨が部分的にはっきり見えます。
翼状になっていたり、淵が浮き出ていないか、この場合考えられるのは肩前方の
筋肉の拘縮(大胸筋と小胸筋)、僧帽筋の下部あるいは肩甲骨と胸部を結びつけ
安定させる役目をする前鋸筋が弱くなっている。



後部ローテーター・カフについて 

 

小円筋-肩関節の内転、伸展、外旋

起始:肩甲骨(外側縁・下角)停止:上腕骨(大結節)

 

棘上筋-肩関節の外転

起始:肩甲骨(棘上窩)停止:上腕骨(大結節)

 

棘下筋-肩関節の外旋、伸展

起始:肩甲骨(棘下窩)停止:上腕骨(大結節)

 

肩甲下筋-肩関節の内旋、水平屈曲

起始:肩甲骨(肩甲下窩)停止:上腕骨(小結節)

 

後部ローテーター・カフの形状と対称性を観察する。
肩甲骨に萎縮があったり、くぼみがある場合、弱くなっているか神経障害や
脱神経の恐れがある。また、この領域の筋肉が弱くなっているか棘上筋が弱いことを示す。

8.菱形筋の拘縮

痛みやスパズムにより菱形筋が拘縮していないか確かめること。
多くの場合肩の痛みの原因はこれらの筋肉のオーバーユース(使いすぎ)
によるものである。肩関節自体の痛みや機能障害が炎症の原因になっている場合もある。

9.肩部前屈:肩甲骨の動きの観察

次に自分で腕を動かしてもらう。腕を頭の上まで上げ下げを指示する。
この時両肩がどのように動いているか、左右を比べる。
同じ高さに上がっているか、肩甲骨の内側縁は同じように下がっているか、
腕を下げたとき、翼状になっていないか、両肩や左右の肩甲骨が対称的でない場合、
肩関節の拘縮や肩関節のバイオメカニクスが考えらる。

両腕を前に上げて、どこまで上がるかを確認する。
腕は同じ高さまで上がっているか、片方の肩がもう一方に比べて上がっていないか、
動作の途中で肩が上がる場合、それは肩甲帯のオーバーユース(使いすぎ)か
肩甲上腕関節自体が硬直している恐れがある。

10.肩部前屈:可動域の観察

ローテーター・カフの可動域:90° 
肩甲骨が動いて制限のある側の可動性を補うため、角度を見れば良い。

11.(肩関節の前屈:有痛弧90°~120度)

両腕を上げさせる。この時痛むか確認する。
腕を90°~120度動かして痛む場合、有痛弧といい、ローテーター・カフの炎症、
滑液包炎、二頭筋腱炎などの症状である。

12.外転可動域の観察:拇指をたたて腕を横からできるだけ
高く上げるように指示する。
下げてもらい、痛みの有無や関節摩擦音がないかを確認する。
腕の高さが左右対称でない場合、肩甲上腕関節の痛みや機能障害や
拘縮などの可能性がある。

    

13.外旋可動域の観察

次に腕を外旋してもらいます。運転するようなしぐさで腕を外側に開かせます。
正常な可動域は90°です。80度も正常範囲です。
これは方の前方を開く動作です。
この領域に拘縮や炎症がある場合、外旋可動域に制限が生じる。
開かないのはローテーター・カフの弱さを示す。

14.内旋可動域の観察

後ろを向いてもらい拇指を腰に当てさせる。
片手を背中に沿って拇指を上げさせます。拇指の高さを測る。
反対側の腕も上げてもらい確かめる。
左右対称か、痛みはないか、動きの制限の確認する。

左右どちらかが低いのは、肩後方の拘縮や回外筋群の弱さが考えられる。
肩の機能障害や痛みはよくローテーター・カフ後方の筋肉に炎症や
スパズムを引き起こし内旋動作を制限する。
この関節に痛みがある場合もこれらの筋肉はスパズムや拘縮を引き起こし、
内旋動作を妨げる。

15.肩甲帯の可動域の観察

肩甲帯の動きの観察

①僧帽筋上部と肩甲挙筋を使う。
筋肉の弱さや肩甲帯に拘縮がないかを観察する。
②肩を後ろに引く動作をさせる。
僧帽筋と菱形筋の拘縮に注意して、小胸筋などの前面の組織が緊張して
動作を妨げていないかどうか見ること。

③腕を組ませ、肩甲帯を突き出してもらう。
この動作で菱形筋、僧帽筋など、後部肩甲帯がストレッチされます。
強度もテストすること。

④小胸筋の観察など。

   

 

筋力テスト

1.前屈

腕をまっすぐに伸ばしてもらい、上からゆっくり抵抗をかける。
それぞれの筋力を確認する。
弱さの原因となるローテーター・カフの痛みはないか、僧帽筋や三角筋(前部)
に痛みはないか確認する。

肩甲帯が胸部に安定して収まっていないと肩関節を前屈させることが難しくなる。
患者に後ろを向いてもらい、同じテストをする。

腕を前にまっすぐに上げさせます。患者の肘の近位に手を置いて下に押し、
腕が下がらないように力を入れてもらう。
肩甲帯(前鋸筋、菱形筋、特に僧帽筋の下部に弱さがあると)
肩甲骨が翼状に動いたり、抵抗力に負けたりします。

 

 

2.外旋筋群

肩の回旋強度。肘を90°に曲げてもらう。左右同時に行う。
外側から圧をかけます。このテストは外旋筋群の強度、つまりローテーター・カフの
強度を調べる重要な検査である。
後方と上方のローテーター・カフ、棘上筋、棘下筋、小円筋を調べる。

後方ローテーター・カフに多いがこれらの筋肉に部分断裂や完全断裂などがあると
患者の腕は力に負けて閉じてしまう。
痛みがある場合に考えられるのは滑液包炎や腱炎、またはインピンジメント症候群、
つまり上方ローテーター・カフの腱が肩の骨の間に挟まれ圧迫されることで炎症を起こし、
外旋動作で弱さや痛みがあらわれる障害である。

 

3.内旋筋群

内旋テスト:肘関節を90°に曲げてもらう。
験者の外旋筋より、患者の内旋筋が強いことが多いので験者は腕を交差させ右手と右手、
左手と左手が合わさる様にして、両手を近づけるように力を入れてもらう。
抵抗力は徐々に加える。この動作で痛みや弱さが無いか確認する。
肩甲下筋に障害があると弱さが生じる。大胸筋の障害も同様です。
この動作で痛みある場合、この領域の炎症か二頭筋腱が原因。

        

4.外転筋群

肘関節を90度に曲げて痛みがある場合、ローテーター・カフを傷める可能性が
あるのでテストは中止する。
肩の腱が骨の間で圧迫されるため、炎症があると痛みが生じます。
また圧迫は損傷を引き起こし、症状を悪化させる原因となる。
腕を上げ肘が下がらないように,肘部に抵抗を加え痛みや弱さを確認する。
この動作で弱さが見られる場合、原因は痛みあるいは三角筋の弱さ、
棘上筋腱の弱さが考えられる。
さらに腋窩神経によって支配される、三角筋の神経障害も原因の一つ
として考えられるため、これはC5神経根から始まる腋窩神経のテストにもなる。
この領域に弱さがある場合、神経の関与も疑う。

5.三角筋感覚テスト

患者が左右どちらをより敏感に感じるかを比較し、左右を比較して感覚が
鈍いようならC5神経根が関与している可能性がある。

肩の検査の前に、簡単な頚部の検査を行う。
首を横や上下に動かして問題はないか、その動作が肩の症状に変化を与えないかを
確認する。
頚部の可能性を除いたら肩のテストにかかること。

    

    

徒手テスト

1.棘状筋テスト/空き缶テスト

腕をまっすぐにして上げます。これは棘上筋のテスト
または空き缶テストと呼ばれる。
拇指を下に手のひらを外側に向けて広げ、軽く腕を上から押す。
弱さが感じられるかあるいは痛みが出たかを尋ねる。 
腕を内旋させ棘状筋を使えない状態にして抵抗力をかける。
ローテーター・カフのひとつ、棘上筋の腱に弱さがみられたり、
痛みがあればテストは陽性で腱炎があることを示している。

2.クランクテスト

立位で肩関節にある繊維軟骨、関節唇を観察する。

(関節唇:関節唇は関節窩を深くして安定させる)
左右の肩にテストを行う。
腕を外転させ、肘関節を曲げる。肩関節を下に押して、肩甲骨を固定する。
関節窩に向けて押し込むように力を入れる。
そして回旋させる。関節唇に違和感や断裂、炎症などがあれば、
ポキポキする音や痛みがある。



理学療法評価法 検査1

 以上で終わりです。


      
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